チョニキ!
わすれゆきキャスト紹介14中山大介:藤原晴天役
キャスト紹介も、いよいよラストです。
中山大介チョニキ!!
めちゃくちゃうらやましい名前なんですよね。
僕の苗字は石橋なんですけど、僕が「橋」の字を書いている間に、アニキは「中山大介」まで全部書けるんですよ。
僕の苗字の一文字より、アニキのフルネームの方が画数が少ないんです。
急いでいる時とか、サインしてくださいとか、名前を書かないといけない時って、この「橋」という字を書くたびに結構もどかしさを感じるんですよね。
だからアニキの名前を見るたびに、
「こういう時いいなぁ。」
「シンプルで画数が少なくていいなぁ。」
と、ついつい思っちゃいます。
さて、さっきからアニキ、アニキと言っていますけども、僕とひろしくんは中山大介という役者のことを普段から「アニキ」と呼んで、小ネタにしています。
決して、
「尊敬しているから。」
「憧れているから。」
という意味ではありません。
親しみを込めた小ネタなんです。
……でした。
でも今回、初めてアニキの演出する舞台に出演させてもらって、その気持ちはちょっと変わりました。
2500ミリリットルぐらい尊敬が増えました。
いや、2500ミリリットルじゃないですね。
2500ミリグラムかな。
小さじ一杯分ぐらいのリスペクトが入りました。
なんでそんなにすごいと思ったのか。
今回のお芝居って、とにかく情報量が多いんですよ。
会話劇ですし、ちゃんと役者自身が整理できていないと成立しない作品なんです。
だから、
「どんな演出をつけるんだろう。」
と思っていたんですが、アニキの奴、最初は細かいことを全然言わないんですよね。
まずは作品全体をみんなで共有する。
そのために、細かい演出を一旦抜きにして、荒立ちをするんです。
役者にまず全部やってもらう。
そうすると、
「この役はこうなのかな。」
「この人との距離感はこうかな。」
「この間はこれぐらいかな。」
と、自分たちなりの感覚が少しずつ育ってくるんですよね。
台本を読んだだけでは分からなかったことが、実際に動くことで見えてくる。
そのあとで演出が入るから、
「なるへそ!自分はこう思っていたけど、演出のイメージはこっちなんだ。」
という比較ができるんです。
だからものすごく役作りがしやすかったんですよ。
全体像も分からないうちに、細かく演出の指示をされても、役者としては飲み込めないこともあります。
でも一度、自分の中にイメージを作ったあとだからこそ、演出の言葉がすっと入ってくる。
しかも、自分のイメージと演出のイメージが一致していたら、その部分は演出は何も言う必要がありません。
その分、他の課題に時間を使える。
すごく効率がいいしクリエイティブ。
だから今回の稽古場って、役者同士がものすごく仲がいいんです。
自分たちで創り上げているという感覚が深い。
でも仲良しこよしではないん。
自分で考えて、自分で課題を見つけて、演出と相談する。
役者同士でも、
「ここは、こうしてみよう。」
「演出のイメージってこういうことじゃない?」
と話し合いながら作っていける。
だから僕自身、
「アニキからたくさん演出を受けた。」
という印象が、実はほとんどないんです。
みんなで作り上げた。
そんな感覚なんですよね。
もちろん、
「じゃあ演出家はいらないじゃないか。」
という話ではありません。
そういう空気を作っているのが、まさに演出なんです。
役者同士が主体的に動ける稽古場。
それを作ってくれているからこそ成立している。
最後に、みんなで作ってきたものを整えていく。
見せる作品として仕上げていく。
それがアニキの演出なんですよね。
だから演出を受けても、
「なるほど。」
とすぐ対応できる。
すごく気持ちのいい演出でした。
今回のお芝居は、古墳時代や飛鳥時代の人物や地名をモチーフにしています。
だから演出のやり方まで、その時代らしいなぁと思ったんです。
アニキの演出で思い浮かべたのは、聖徳太子の十七条憲法。
「和を以て貴しとなす。」
お互いを尊重しながら、自分たちで考え、自分たちで作っていく。
そんな空気なんですよね。
さらに古事記には、国の治め方として
「シラス国」
と
「ウシハク国」
という考え方があります。
「シラス」は、民を慈しみ、民のために国を治めること。
「ウシハク」は、権力や武力で支配して治めること。
演出にも、この2つってあると思うんですよ。
役者を信じて尊重するシラス演出。
怒鳴りながら支配するウシハク演出。
アニキは間違いなく前者。
今回の作品が古事記を一部モチーフにしているからこそ、その演出方法まで重なって見えてしまうんですよね。
もちろんこれは僕の勝手な深掘りです。
でも、そういう楽しみ方もできる作品なんです。
そしてアニキが演じる役は、藤原晴天。
藤原と言えば、日本史では蘇我氏のあとに権力を握り、栄華を極めた一族です。
しかもアニキの役には弟子が2人います。
ひろしくん演じる中臣カムイ。
ロミ姉演じる中乃オミコ。
この2人のモチーフは、中大兄皇子と中臣鎌足。
そして師匠が藤原晴天。
これもまた歴史好きにはニヤリとする設定。
中大兄皇子と中臣鎌足は乙巳の変を起こし、蘇我氏を滅ぼします。
その後、中大兄皇子は天智天皇となり、中臣鎌足は天智天皇から藤原姓を賜って藤原氏の祖となる。
そんな歴史が、この人間関係にも重なっている。
歴史好きとしては、こういう遊び心がたまらないんですよね。
さて。
アニキを初めて知ったのは、ひろしくんが出演していたピロシキマン公演「街灯ブルース」でした。
その時のアニキ、完全にジャック・スパロウだったんですよ。
なんか知らんけど、パイレーツオブカリビアンのジャックスパロウだった。
衣装もメイクもそのまんま。
だから顔が分からなかったんです。
翌年、一緒の舞台(マミーブルー)で共演することになって、顔合わせした時、
「あれ?」
「ジャック・スパロウじゃない。」
というのが第一印象でした。
そこから何度か共演する機会があり、ギリシャ劇でも2回一緒に舞台に立ちました。
11月下旬。
しかも野外。
気温は10度ぐらい。
でも風がものすごく吹いていて、体感は0度。
衣装は薄い。
鼻水を垂らしながら、鳥肌立ちながら、体震わせながら、
つまり、凍えながら本番をしました。
あれを一緒に乗り越えたことで、なんとなく戦友みたいな感覚になったんですよね。
だから今回も、
「アニキが演出なら出てみようかな。」
と思ったんです。
ただ、娘が小学校に入ったこともあり、稽古に参加できる日数が限られていました。
嫁さんにも相談しないといけない。
いろんな事情もある。
だからアニキに、
「ちょっと難しいかもしれません。」
とLINEしたんです。
そしたら返ってきたのが、
「うるせぇ。出ろ!」
でした。
ワンピース好きなら分かりますよね。
ドラム王国で、チョッパーが「仲間になろう」と誘うルフィに対し、いろんな理由を並べて断ろうとした時。
ルフィが一言、
「うるせぇ!! 行こう!!!!」
「お、おぅ!」
と言うあのシーンです。
だから僕もLINEで、
「お、おぅ!」
と返事をしました。
でも実際には、稽古日程もかなり融通してくれて、僕が参加しやすいようにたくさん調整してくれたんですよね。
雑な言いっぷりだけど、その実、かなり僕が参加しやすいようにかなり配慮と融通を利かせてくれました。
本当に感謝してあげます。
最初は小ネタとして「アニキ」と呼んでいました。
でも今回、演出や見えないところでの気遣いを知ってからは、本当にアニキってすごいなと思うようになりました。
そんな「うるせぇ、出ろ。」のやり取りもあったので、今では心の中で、
「チョニキ」
と呼んで、また小ネタにしております。


