ふてえやろうだセミのやろう!
今週末はてめえの終末だ!
玄関を開けると、セミが死んでいた。
ここは7階。
よく飛んできたな。
必死こいてここまで飛んできて、コンクリートに囲まれてちゃ、死に華咲かぬ。
せめて土の上で寝かせてやろうと、セミをつまむ。
ミミミ。
おっと、生きていやがったか。
でも無抵抗。
まもなくくたばっちまうのには、ちげえねえ。
ほら、つかまれと指を差し出すも、つかまる気力はなさそうだ。
仕方なく、つまんで運ぶ。
ちょうど降りたところには木が植えてある。
そこには土もある。
雑草が生えているのだから、土の気も強かろう。
ところがどっこい、そこは道路沿い。
何かの拍子に道路にはみ出して、車に轢かれちゃあ、あたしも情けをかけた甲斐がない。
ええい、こうなりゃ毒を喰らわば皿まで。
蕎麦を喰らわばタレまでだ。
駐車場の近くに公園がある。
くそがきどもも立ち入れない場所がある。
そこに生えている木に止まらせてやろう。
そこで、おとなしくくたばるがいいさ。
セミの寿命は1週間と聞く。
おめえさんは、もう週末だろう。
いや、終末だろう。
とことことセミをつまんで駐車場へ向かううちに、セミが足を動かしだした。
歩こうとしている。
てめえ、動かす足があんなら、てめえの足でつかまっていやがれ。
そう思って、つまむのをやめ、あたしの指につかませた。
なんだなんだ。
コンクリートから離れたら、徐々に元気になってきやがったじゃないか。
命拾いしやがったな、セミのやつ。
指につかまる力も、だんだん力強くなってきた。
チクッ。
いてえな、このこんちくしょう。
そっとつかまりやがれ、あほんだら。
よく見ると、セミのやろう、口を伸ばしてあたしの指にぶっ刺していやがった。
こんがきゃ。
ちゅーちゅーと、あたしのジゴ(体液)を吸おうとしてやがる。
やろう、そこまで許しちゃいねえぞ。
と、ひっぺがす。
油断も隙もない、ふてえやろうだ。
つまみ出されねえだけでもありがたいと思え。
そう言って、再びつまんで運ぶ。
まあ、こいつは栄養を摂ろうとしているくらいだから、まだ生きようとしているのだろう。
その心意気は気に入った。
公園までは、約束どおり届けよう。
公園に到着。
よさげな木を発見。
ほら、セミよ。
木だ。
おまえの最後の泊まり木だ。
ほら、しっかりつかまれ。
セミは木に、自分の足でしっかり止まった。
じゃあな。
達者で暮らせよ。
そう言って去ろうとしたら、あんちくしょう。
しょんべんひっかけて、飛んでいきやがった。



寝る前に読んでしまいました。微笑ましい光景を想像していまい、眠気も飛んでいってしまいました。