伝えないと伝わらない。察してほしいは奥ゆかしさでなくおこがましさ。
世界一シンプルな書き方の教室
文章の書き方を解説する本って、たくさんありますよね。でも大概、同じようなことを言っている。こういう書き方をしましょう、こういう手法があります、という感じで、読んでいるうちに「自分には無理だな」という気持ちになってしまう。
なぜかというと、読破できないからなんです。つまらないから。
文章が苦手な人というのは、そもそも文章を書くことに苦手意識があったり、書いたことで嫌な思い出があったりする。書けるようにならないといけないと思って本を手に取ったのに、読んでいるうちにその苦手意識がまたほじくり返されるような感覚になってしまう。だから読み切れないんですよね。
その点でこの本は、全然違いました。
文章の本なのに、人生が描かれている
読み進めていくうちに、著者さんの人生を追体験しているような感覚になってきたんです。
何が良かったかというと、著者さん自身が子供の頃に文章がとても苦手だったところから、どうして書くことが好きになっていったのか、そのエピソードが幼少期から丁寧に描かれているんですよね。
幼少期の話というのは、誰でも経験しているじゃないですか。ほとんどの人が小学校に行って、国語の授業を受けて、作文を書いたことがある。だから著者さんの幼少期の話になると、当時の自分の気持ちや情景が自然と蘇ってくる。得意だった人も苦手だった人も、あの頃の素直な感情が戻ってきて、すごく感情移入してしまうんですよね。
僕自身も、文章を書くのが好きになったきっかけは小学3年生の国語の授業でした。絵本を書きましょうという課題で書いた作品を先生に褒めてもらって、みんなの前で「面白いよ」と紹介してもらった。あの体験があったから、文章を書くことが好きになった。著者さんのお母さんから毎日日記をつけるよう言われたというエピソードとも、根っこのところで重なるものがあって。文章が好きになるかどうかは、小学校の頃の体験がすごく大きいんだなと改めて感じました。
一方で、この本にも書かれていたんですが、一生懸命書いた作文に対して「段落がおかしい」「文法が違う」「てにをはが変」と最初から細かく指摘されてしまうと、自分の気持ちや意見を表現したいだけなのに、なんでそんなことまで気にしないといけないのかという気持ちになってしまう。苦手意識が生まれるのは、そういう積み重ねから来ているんでしょうね。
型を学ぶことの大切さ
文章を書く上で大事なのは「型」だ、とこの本は言っています。
これ、僕の演劇経験とすごく重なるんです。19歳から演劇を始めたとき、めちゃくちゃ下手くそで、先輩役者や座長に毎日罵声を浴びせられていた。自信がまったくない状態で演劇の本やメソッドを読むと、「こんなことまでしないといけないのか」とネガティブになって、余計に前に進めなくなる。
そこで僕がやったのは、上手い人や好きだなと思う人の表現を真似することでした。真似していくうちに、演技には型があるんだと気づいた。型がわかれば、そこから自分らしく自由に表現できるようになっていく。
文章もまったく同じで、好きな書き手の文章を真似てみることで、型が自然と身についていく。苦手だからこそ、型に沿ってやることが大事なんですよね。
プレップ法は、すでに小学校で習っていた
この本で最初に紹介されているのが、プレップ法という型です。結論を最初に述べて、次に理由、そして具体例、最後にもう一度結論で締める。ビジネスメールでも日常の文章でも、これをやるだけで伝わり方がぐっと変わる。
大人になってこの方法を知った時、なんでこんな大事なことを学校で教えてくれなかったんだと思ったんですよ。ところが、実はすでに習っていたんです。
娘が小学2年生なんですが、授業参観に行った時に、隣の4年生のクラスの授業が目に入って。見てみたら、作文の授業でまさにプレップ法を使った例文が黒板に書いてあったんです。「僕が1番楽しかった夏休みの思い出は海水浴です。なぜなら、家族でキャンプをしたり、スイカ割りをしたり、夜に懐中電灯を持って散歩したりと、普段では絶対に経験できないことがたくさんあったからです。だから、あの海水浴がとても楽しかったです」というような例文で、まさに結論・理由・具体例・結論の流れになっていた。
もうびっくりしましたよね。ちゃんと習っていたんだ、と。
学校で教えてくれないんだよ、とよく言いがちですが、大概のことって実は学校で教えてくれていたりするんですよね。問題は、その時点で自分がどれだけ必要性を感じていたか、なぜそれをやるのかを掘り下げられていたか、というところなんだと思います。
自己PRと志望動機こそが、文章力の核心
この本で特に印象に残ったのが、就職やアルバイトの自己PRや志望動機の書き方に、かなりのページを割いて丁寧に教えてくれているところです。
確かに、自己PRや志望動機って、何を書けばいいのかわからなくてつい後回しにしてしまいますよね。でも著者さんが強く勧めているのには、シンプルな理由があって。
自己PRというのは、自分のことを相手に伝えることです。一生涯ずっと必要になるスキルなんですよね。初めて会った人に「よろしくお願いします」だけでは、何をよろしくしてほしいのかわからない。名刺を交換しただけで終わってしまう。でも自分のことをちゃんと言葉にして伝えられると、印象がまったく違ってくる。
日本には「察する文化」があって、言葉にしなくても伝わるはずという感覚がありますよね。でも初対面の相手に察してもらおうというのは、奥ゆかしいのではなくおこがましいんですよね。ちゃんと伝えないと、伝わっていないのと同じ。伝わっていなければ、存在していないのと同じ。
自己PRと志望動機がしっかり書けるようになれば、大概の文章は書けるようになる。それがこの本の言う「世界一シンプル」の意味なんだと思いました。
人生と知識が交差するハイブリッドな本
この本のもう一つの良さは、構成の読みやすさにあります。
文章の書き方をしっかり教えてくれながら、適度なタイミングで著者さん自身のコラムが挟まれている。時給100円程度だったウェブライターが、やがて時給5,000円になっていくまでのプロセスが、自慢話でもなく自伝でもなく、ちょうどいい分量で語られていて。
読んでいると、著者さんのプロセスをなぞることで「これができるなら自分もこういうふうになれるんだ」という道筋が見えてくる。いわばベネフィットを見せてもらえるような感覚なんですよね。
文章の書き方を教えてくれる本でありながら、著者さんの人柄と人生が自然と伝わってくる。知識と人生が融合した、ハイブリッドな一冊でした。文章に苦手意識がある人ほど、手に取ってほしい本だと思います。
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きゃーわー気づくの遅くてすみません!!!
嬉し過ぎるんですが、、、!!!!
拡散させてください✨
こんなに解像度高く読んでいただき、
感激です😭