2000年前からただいま。そしておかえり。
演劇は時代を超えて友達になる
2000年の時を越えて、子供たちと絆ができた日
なりきり演劇のワークショップ、無事に終わりました。
役者の相棒と二人で、弥生時代の奴国の王様と側近という役を演じながら、小学5年生から中学生までの12名の子供たちと一緒に弥生時代の歴史を体感していくという体験型の演劇です。子供たちが映っている写真は載せられないんですが、めちゃくちゃ楽しかったです。
演劇でもなく、講座でもなく
このワークショップのユニークなところは、演劇を「見せる」ものでも、歴史を「教える」講座でもないということ。子供たち自身が当時の衣装を身につけて、演じる側に回って、自分たちで考えながら参加していく形なんです。
最初はね、恥ずかしがったりするんじゃないかなと思っていたんですよ。はじめましての子供たち同士が、いきなり一緒に演じるわけですから。でも蓋を開けてみたら、最初から構えることなく、ごく自然に楽しんでくれていた。この子たちの素直さには、本当に驚かされました。
子供たちの表現力がすごかった
4人1組のチームに分かれて、弥生時代の暮らしをジェスチャーや動きだけで表現するワークをやったんですが、ここがもう本当にすごくて。
例えば、猪に襲われている人を助けようとするシーン。4人いるのに、誰も猪を演じていないんですよ。猪に襲われている人と、助けようとする人と、猪を追い払おうとしている人——この3つを表現することで、「そこに猪がいる」ということが見えてくる。あえて見せない、という表現を、演劇なんてやったこともない子供たちが自然にやっていた。
田んぼを耕すシーンでは、みんなで稲を植えて、そして転んでしまうというオチまで作ってきた。なぜそういうオチにしたかというと、その前に自分たちも実際に田植えをやってみて転んだという実体験があったから。「弥生時代の人たちもこういうことがあったんじゃないかな」と想像して表現したというんですよ。自分の実体験を通して、2000年前の人たちの暮らしを想像できるって、すごいことですよね。
丸太を運んで家を建てるシーンでは、運んでいる人、立てていく人、そして完成した家そのものを表現するのではなく、家が完成した時の喜びの感情を体全体で表現している子がいた。形じゃなくて気持ちを表す、というのがまた印象的で。
銅矛を作るシーンでは、作っていく工程を動きと効果音だけで表す。それぞれのチームが自分たちの想像力を活かして、全然違う表現をしてくるんですよね。
歴史が「遠い話」じゃなくなる瞬間
なりきり演劇で本当に歴史を体感してもらえるのか、正直なところ半信半疑な部分もあったんです。楽しんでもらえるとは思っていたけど、弥生時代のことをちゃんと感じ取ってもらえるだろうかと。
でも子供たちってやっぱりすごくて。
「弥生時代の人たちも、私たちと同じように喜んだり笑ったりしていたんだ」ということを、体を動かしながら自然と感じ取っていくんですよね。教科書で読むだけだと「自分とは遠い人たち」になってしまうけど、同じ動きをして、同じ感情を持って表現するうちに、「あ、同じ人間なんだ」という感覚になっていく。その感覚が持てると、歴史を学ぶことの意味がまったく変わってくると思うんです。
「ただいま」と言ったら「おかえり」と言ってくれた
王様と側近として子供たちと過ごしたあと、タイムスリップしてきた設定なので「弥生時代に戻す儀式」をやって、一旦さようならをしたんです。そのあと振り返りと記念撮影のために、衣装はつけたままで研修室に戻ったんですよ。
子供たちのいる部屋に入りながら、ちょっと冗談で「ただいま」と言ったら。
子供たちが「おかえり!」「やったー、戻ってきた!」と笑顔で迎えてくれたんです。
これが本当に嬉しかった。頭では「役者さんが演じている」とわかっているはずなんですよ。でも気持ちの面では、弥生時代の王様と側近を友達として見てくれていた。時空を超えて、絆ができていた。
感想で「王様や側近の人たちと話ができて、昔の人たちも自分たちの国の民と一緒に幸せに暮らすために一生懸命生きていたんだなとわかった」と言ってくれた子もいて。もう、本当にめちゃくちゃ嬉しかったですね。
歴史に「友達」ができること
今後この子たちが学校で弥生時代の授業を受けたとき、あるいは本で読んだとき、絶対にこの体験を思い出すと思うんです。「私は、弥生時代の王様と友達なんだ」という気持ちとともに。
友達が住んでいた時代、友達が住んでいた国のことだったら、もっと知りたいって思うじゃないですか。それが歴史への興味につながっていく。
演劇を通して、子供たちが自分たちの暮らす地域の歴史と、気持ちの面でつながれるようなお手伝いができた。しかも子供たちにとっては「ただただ遊んだ」という感覚でしかない。楽しく遊びながら、気づいたら歴史と友達になっていた——そういう体験ができたんだと思います。
なりきり演劇という企画の可能性を、改めて感じた1日でした。
はるか遠い過去の王様として子供たちと過ごした記憶が、なんか今でも不思議と心に残っていて。2000年以上を超えた絆ができたような、そういう感覚が続いているんですよね。


