「お腹の赤ちゃんにたくさん話しかけてあげてくださいね。」
助産師さんから言われました。たしかに朝腹帯巻く時やそれ以外でも「はなちゃーん、おはよー。元気ですかー。」と声を掛けてはいましたが、話しかけるという感じではなかったように思います。
話しかけてあげてくださいと言われても、いったい何を話せばいいのかわかんないじゃないですか。途端にかしこまってしまいました。
「えと・・ご趣味は?」
「お見合いじゃあるまいし。」
妻から突っ込まれました。
「えと、・・じゃあ・・拝啓、」
「手紙か!」
「えっとぉ・・前略、」
「手紙か!」
これにはさすがに困りました。僕自身、そんなにお喋りではないタイプなので。
SNSの発信やお芝居で人前で表現することは得意な方ですが、日常ではそんなに口数の多い人間ではありません。どちらかと言えば寡黙な方なので、何を話していいのか分かりません。そもそも話しかけたとしても反応がないじゃないですか。
あったとしても妻のお腹を蹴るぐらい。僕には伝わりません。
名前で呼ぶことと腹帯巻きなどでせっかく愛情たっぷりになっていたというのに、ここにきて急激にかしこまってしまいました。
「娘と何を話していいのかわからない・・。」
思春期の娘を持つ父親の悩みを、まだ生まれてもいないわが子に対して抱いてしまっています。
「絵本読んでみたらどう?」
妻からの提案。なるほど、絵本の読み聞かせか。娘が生まれたら、たっくさん絵本を読んであげたいなと思っていました。
僕も妻も絵本が好きで、結婚当初は図書館で絵本を大量に借りてきて、休日はふたりでずっと読み耽っていました。
「そうか、今から読んであげてもいいんだ!」
ということで、お腹の子に向かって絵本の読み聞かせをすることにしました。が、それもなかなかに難しいものがありました。
僕は役者をやっていますので、読み聞かせとはいえ、しっかり稽古をしたものでないと聞かせるわけにはいかないと、そんな風に頭が働いてしまいます。
お腹の中とはいえ、初見の本をいきなり人様に聴かせるなんて、それは失礼ではないか!なんて思っちゃったりして・・。
まぁそこのところは、自分の子どもになんだから別にいいだろうと思うのですが、この役者のサガというか癖というか、払拭するのにけっこう勇気がいりました。
また、お腹の子に読み聞かせをするということは、実質妻も僕の読み聞かせを聴くわけですよね。
妻も役者をやっていますので、僕が読み聞かせをしているのを聴いて、
「へたくそだなぁ。」とか、
「もっとこう読んだらいいのに。」とか、
「そこの表現は違うと思う。」とか、
思われるんじゃないかなぁと。別に妻はそんなことは思ったりはしないのでしょうけど、どうしても気にしてしまいます。
だからといって、めちゃくちゃ心を込めて読むというのも、恥ずかしいんです。役者って感情豊かに表現することに、羞恥心とかないって思われるかもしれませんが、けっこう恥ずかしいんです。
稽古に稽古を重ねるから恥ずかしさがなくなってくるんですけど、初見でいきなり気持ちを込めるっていうのは、ほんと恥ずかしいんです。
だから複雑です。
しっかりと読み聞かせはしてあげたいけど恥ずかしい。でも役者である以上、下手だと思われたくないとか、いろんな邪念が混じって・・。全部自分のエゴですけど・・。
そんなの、一度読み聞かせしたら全部いらぬ心配だったとわかりました。
お腹に向けて絵本の読み聞かせをしてみると、なんだかあったかい気持ちになってきました。
そして妻の表情を見ると、なんて穏やかな顔をしてるんだろう。
「あ、蹴ったよ。ちゃんとお父さんの声聞いてるみたい。」
何度も言うように、胎教というものがどこまで効果あるものなのか僕はよくわかりません。
絵本を読み聞かせしたとて、はっきりと言葉として聞こえているわけではないようです。
お腹の中だし、さらに羊水を通して伝わるから、
ぼわーんぼわわーん
という感じにしか聞こえていないと何かの本で読みました。それでも、僕の、お父さんの声だというのは認識してくれてるのか、
僕が読み聞かせをしている時によく、
「あ、またお腹蹴ったよ。」
と妻が言ってきます。
「へたくそーって言われてるのかな?」
「違うよ、嬉しいんだよ。お父さんの声が聞こえるから。」
ぼわーんぼわわーんでも、僕の声だと認識してくれてるのかもしれません。
妻曰く、読み聞かせ以外の時でも僕の声が聞こえると、お腹を蹴ることが多いらしいです。
定期健診に行った時のこと、助産師さんがお腹を触りながら触診をしてくれています。
「どうですか?たくさん話しかけてあげていますか?」
「はい、絵本の読み聞かせをしています。」
「ああそれはとてもいいことですね。」
そんな会話をしていると、妻のお腹がぼこんぼこん動きました。助産師さんはびっくり、
「おおすごいすごい!お父さんの声が聞こえたら元気に動き出したよ。この子、お父さん大好きね。」
この言葉に完全にノックアウトされました。
「すみません、ちょっとトイレに行ってきます。」
嬉しくて嬉しくて、涙がぽろぽろぽろぽろ、ぽろぽろぽろぽろこぼれ落ちてくるんです。トイレットペーパーでいくら拭いてもぽろぽろぽろぽろ・・。
「あかちゃんが、できました」
と妊娠発覚したときから、ずっと父親になるってなんだろう?自分なんかが父親になっていいんだろうか?とずっと思っていたので、
「この子、お父さん大好きね。」
この言葉で、
「ああ、お父さんになっていいんだ。」
とやっと思えたのだと思います。
胎教というのが本当にあるのかどうかわわかりませんが、少なくとも、父親にはなれたような気がします。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
この連載記事は全16話を予定しています。
週2、Substackでは無料で配信します。



ばっちょさん、おはようございます✨️
そしてお久しぶりになってごめんー🙇♀️
手足口病祭り終わったので、ご無沙汰してます🥹🥹
助産師さんの「この子、お父さん大好きね」でトイレに立つところ、そこまでの流れが全部効いてきました。
お父さんになっていいんだ、という許可が、赤ちゃんの側から出るんですね。
私は「拝啓、」で完全に笑ってたので、落差がずるいです笑
(*´・ω・。)σツンツン