2年間、僕が逃げ続けた女優と共演
わすれゆきキャスト紹介10峰尾かおり:猿田ウズメ役
峰尾さんの演技をみていると、最近はあるスマホゲームの映像が浮かびます。
「キングショット」。
アプリの広告でよく流れてくるゲーム。
ちなみにゲーム名を出していますけど、これは広告でもPR案件でもありません。
あくまでも例え話です。
峰尾かおりという役者を紹介するのに、この例えがものすごくしっくりきたんです。
キングショットに限らず、フィールドを歩いて、敵を倒したり、木を切ったり、素材を集めたりするゲーム。
そういうのありますよね。
プレイヤーはキャラクターを動かすだけなんですが、そのキャラクターは常に武器を放っている。
弓矢だったり。
鎌だったり。
鉄砲だったり。
プレイヤーは移動を操作するだけ。
キャラクターは進行方向へ向かって、自動的にずっと攻撃を続けている。
そんなゲームがありますよね。
峰尾さんの芝居って、まさにあれなんですよ。
何のこっちゃと思われるかもしれません。
セリフを一言しゃべるたびに、目線も気持ちも意識も、その時向いている相手へ一直線に飛んでいくんです。
相手役者へ。
観客へ。
一直線に届く。
しかも、その武器が普通の弓矢じゃない。
ボウガン。
一撃が重たい上に連射できる。
普通だったら、そこまで強く響かないようなセリフでも、一言一言がボウガンとして飛んでくる。
もちろん攻撃しているという意味ではありません。
でも、言葉がグサッと刺さるんです。
人間の滑稽さだったり。
必死さだったり。
かわいらしさだったり。
切なさだったり。
そういうものが一言一言に乗って飛んできて、思わず笑ってしまったり、グッときたり、胸に刺さったりするんですよね。
その刺さり方が面白いんです。
ドン。
グサッ。
ズシン。
メシーン!
ズニューン!
みねおさんの放たれる台詞には擬音がセットでついてくる。
峰尾さん自身、たぶん擬音がお好きな人だと思う。
おそらくそういう感覚を大事にされている方なんでしょうね。
前回、ヨシロヲさんのキャスト紹介で、
「ベテランの役者さんは、それぞれ悪魔の実みたいな能力者になる」
という話を書きました。
ヨシロヲさんは、舞台を液状化させて、お芝居という沼に観客を沈めていく能力者。
では峰尾さんは何か。
ボウガンなんですよ。
一言一言がボウガンになって飛んでいく。
そして、その矢が相手の心へ刺さる。
だから、このキングショットというゲームのイメージになったんです。
僕、ゲームってほとんどしません。
のめり込む性格なので、なるべくやらないようにしています。
でも最近のゲーム広告って、デモ映像じゃなくて少しだけ体験プレイできたりしますよね。
大抵そういうのもスルーします。
時間の無駄なので。
でもキングショットだけは、ついつい遊んじゃうんですよ体験プレイ。
もちろんダウンロードまではしません。
広告の数十秒だけやっちゃうんですよ体験プレイ。
気付いたら夢中になっている。
これも峰尾さんに似ているなって思うんです。
峰尾さんが舞台に出てくると、ついつい見ちゃうんですよね。
しゃべっていても、しゃべっていなくても、目で追ってしまう。
常にロックオンしている。
セリフを言っている相手だけじゃなく、その後の眉の動き。
口元の変化。
呼吸。
視線。
そういう細かいところまで見てしまうんです。
しかもセリフというボウガンが刺さったあとも終わらない。
その傷口を、さらにぐりぐりと広げるように余韻を残していく。
もちろん、攻撃という意味ではありません。
笑いも。
悲しみも。
怒りも。
優しさも。
ほっこりも。
全部です。
言葉が刺さって終わりではなく、そのあとも余韻が続いていく。
台詞を相手に刺したあとの反応をみねおさんは獲物の息はまだあるかというくらい観察して表情という表現でさらに観客の視点をロックオンさせる。
だから、ついつい見続けてしまうんですよね。
ゲームの広告って、本当なら早く終わってほしいじゃないですか。
でもキングショットだけはやっちまう。
峰尾さんの芝居も同じなんです。
次の役者がしゃべっていても、さっき峰尾さんが放った一言の余韻が残っていて、まだ目が離せない。
そこが本当にすごい役者さんだなと思います。
昨日の通し稽古で、その理由がようやくつながったんですよ。
峰尾さんが、
「実は私、弓道をやってたんですよ。」
って教えてくださったんです。
なるほど。
そういうことだったのかと思いました。
弓道って、ただ矢を的に当てる競技じゃないんですよね。たぶん。
座って。
立ち上がって。
弓を取り。
矢をつがえ。
呼吸を整えて。
放つ。
そして放ったあとも、一礼をして、また座る。
その一連の所作すべてに意味がある。
精神が宿る。
だから美しい。
的に当てることだけが目的じゃない。
そこへ至るまでの過程。
そして放った後の姿勢まで含めて弓道なんです。
すなわち「道」
昨日その話を聞いた瞬間、
「弓道の精神が、峰尾さんの芝居に影響してるんだきっと」
って妙に納得しました。
だからキングショットだったんですよ。
最初は自分でも何でキングショットなんだろうと思っていたんです。
弓を放つゲームだからかな。
そのくらいの感覚だったんです。
でも弓道をされていたと聞いて、自分の中で全部つながりました。
しかも峰尾さんの場合は弓じゃない。
やっぱりボウガンなんですよ。
一撃が重たい。連射する。
一言一言の威力が強い。
だから刺さる。
そんな峰尾さんですが、この写真を見ると笑顔がめちゃくちゃ素敵じゃないですか。
実際、お話ししても本当にかわいらしい方なんです。
話し方も柔らかい。
甘いものも大好き。
乙女なんですよ。
でも、僕は出会う前まで峰尾さんをものすごく怖れていました。
というのも、まだ知り合う前。
役者仲間からよく噂を聞いていたんです。
「峰尾かおりというすごい役者がいる。」
「しかも峰尾さんは武闘派ですからね。」
って言われるんです。
武闘派?
すごい役者って武闘派なんだ。
共演したら演技を値踏みされたり、マウントを取られたりする人なんだ。
怖いなぁ。
そう思っていました。
Facebookでもときどき「あなたの知り合いかも」に峰尾さんが出てきてました。
でもプロフィール写真はものすごく愛嬌のある笑顔なんです。
こんなに優しそうな人が武闘派なのか。
そのギャップが余計に怖くて。
だから僕は、絶対に間違えて友達申請だけは押さないようにしようと思っていました。
そんなある日。
演劇フェスのようなイベントを観に行った時でした。
休憩時間に、一人の女性が話しかけてきてくれたんです。
細身で。
物腰が柔らかくて。
すごく優しい雰囲気の女性でした。
「バッチョさんですよね。」
「以前からお芝居を拝見していて、いつかお話ししたいと思ってたんです。」
めちゃくちゃ嬉しいじゃないですか。
「ありがとうございます。」
と言って、お名前を聞いたら、
「峰尾かおりです。」
・
・
・
出たぁあぁああああ!
峰尾かおりぃぃいいいいいい!!
・
・
柔らかい雰囲気で近づいてきて、油断させといて毒殺するんだ。
蛇のようにぃぃいいい!
「ああ、ついに狙われた・・」
と本気で思いました。
鳥肌が立ちました。
でも実際は全然違いました。
Facebookでもつながり、その後、ご縁があって、10年前に『十一人の少年』で初共演。
いつまで経っても暗殺される気配がない。
むしろ一緒にいる時間が楽しい。
いつの間にか僕は峰尾さんの肩を揉んだり、背中をマッサージしたりするようになっていました。
当時、共演者によくマッサージをしていたんですよね。
その時にいろんな話をしていて、
(この人のどこが武闘派なんだ?)
って思ったんです。
後から聞いたら、
武闘派じゃなくて、
舞踏家。
ぶとうか。
戦う人じゃない、踊る人。
なんじゃそりゃ。
「峰尾さんは武闘派ですからね」
というフェイク情報のおかげで、僕は2年間も勝手に峰尾さんから逃げ回っていたんです。
そんなこんながありまして。
今では僕が演出する舞台にも、ちょこちょこ出演いただいています。
そして今回、この『わすれゆき』への峰尾さんの出演が決まった時。
もう本当に飛び上がって喜びました。
「よっしゃ!峰尾さんだ!」
って。
それくらい峰尾さんが同じ舞台、同じシーンにいてくれるというのは、役者としてものすごく安心なんです。
もちろん安心だけじゃありません。
さっきも言ったように、ボウガンが飛んでくるんですよ。
しかも容赦なく刺さる。
その一言一言がこっちの気持ちを引き上げてくれる。
相手役者としても、
「もっと返したい。」
「もっと応えたい。」
そんな気持ちにさせてくれるんです。
だから今回の出演が決まった時は、本当に嬉しかったですね。
さて、そんな峰尾さんが演じる役は、
猿田ウズメ。
前回紹介したヨシロヲさんが演じる猿田彦一と同じ「猿田」という名字です。
お察しの通り、夫婦です。
名前にもちゃんと意味があります。
猿田彦というのは、日本神話に登場する猿田彦大神が由来です。
天孫降臨の時に、天から降りてくる神々の道案内をした神様ですね。
そして、その猿田彦大神と結婚した天津神が、天鈿女命(アメノウズメノミコト)。
つまり、猿田ウズメです。
神様夫婦。
だから今回の『わすれゆき』でも、猿田彦一と猿田ウズメは夫婦という関係になります。
しかも、この配役がまた見事なんです。
天鈿女命は、芸能の神様としても知られています。
天照大御神が天岩戸へお隠れになった時。
神々の前で舞を踊り、その踊りによって天照大神を岩戸から外へ導いた神様です。
踊りで世界を動かした神様なんですね。
だから、舞踏家である峰尾さんがこの役を演じる。
これ以上ないくらいぴったりの配役だと思いました。
セリフだけではなく。
目線も。
呼吸も。
所作も。
そして、その後に残る余韻まで含めて魅せてくれる峰尾さん。
ぜひ、そのボウガンのように心へ届く一言一言にも注目して観ていただけたら嬉しいです。
まぁ、注目せずともしちゃいますけどね。


