お母さんは命がけでお腹の赤ちゃんを守っていますから、お父さんはお母さんを守ってあげてくださいね。
母子手帳を手に入れて僕は父親になる(第2話)
「父親になったという自覚はいつですか?」
こういう質問をよく聞く。僕は即答で答えられます。母子手帳を受け取った時です。妻が仕事で平日にどうしても役場に行くことができず、僕が受け取りにいくことにしました。
めちゃくちゃ緊張しました。だって母子手帳ですよ。どこにも父なんて書いてないわけじゃないですか。行ったら行ったで変に思われないかなと気が気じゃありません。
「ええっー?母子手帳なのにお父さん来ちゃったよぉー。」
なんて思われたらどうしよう・・。完全アウェイではなかろうか・・?
恐る恐る役場へ行く。母子手帳を交付してくれる課へ赴くと、なんだかそこは役場というお堅い雰囲気とは全然違い、あったかくて柔らかい雰囲気に包まれている気がしました。
「母子手帳をもらいに来たんですが・・。」
そういうと個室に通された。ああ、やっぱりアウェイだったんだ。なぜ父が母子手帳を取りに来たのだと尋問されるのだ。
びくびくおどおどしていると、女性が部屋に入ってきました。妻から預かっていた書類を渡すと、
「おめでとうございます。初産ですね。私も3年前に初めて子ども産んで、大変ですけど毎日楽しいですよ、よかったですね。」
ああよかった。尋問じゃなかった。祝福された。すっかり安心しました。イメージしてたお役所仕事じゃない。
「書類は揃ってますね。では母子手帳お持ちしますのでお待ちください。」
と言って、女性はいったん引っ込みました。
すっかり手持無沙汰になってしまったので、妻が用意してくれた書類を見てみました。その中にはアンケートがありました。
Q1・妊娠が分かった時、どんな気持ちでしたか?
1 とても嬉しかった
2 戸惑いはあるけど嬉しかった
3 不安に思った
4 とても不安になった
妻の答えは、1番に力強く〇が書いてありました。一遍の迷いのない力強い〇!
次の質問
Q2・配偶者は信頼できますか
1 とても信頼できる
2 信頼できる
3 あまり信頼できない
4 まったく信頼できない
これもまた1番に力強く〇が書いてありました。
その〇を見た瞬間、ポトリ・・ポトリポトリ・・。まるで目薬を差したかのように、無自覚に涙がポトリポトリと落ちてきました。ほんとにあるものなんですね、やっすいドラマでよく見る演出の、一筋にこぼれ落ち頬を伝う涙、あれです。
やばいやばい、書類に涙をぼたぼた落としてしまった。ばれないうちに乾かさねばと必死にふーふー息を吹きかけている時に、先ほどの女性が戻ってきました。
「お待たせしました。あら・・?」
僕の目が赤くなっているのに気付いたらしく。これでもかというほど優しい眼差しを向けてくださいました。無償の愛とはまさにこのこと!
「どうですか?なにか心配なことありますか?」と聞かれて僕は、
「最近とにかく眠そうなんです。」
「帰ってきたら倒れこむように寝るんです。」
「食べるのさえもなんだか面倒臭い・・というかきついようで。」
「体調もなんとなく優れないみたいで・・。」
と、堰を切ったように自分でもそんな不安を抱えていたんだとびっくりするくらい、不安や疑問が立て板に水のごとく流れ出してきます。
女性は終始「うんうん」と僕の話を聞いてくれて、
「お母さんは命がけでお腹の赤ちゃんを守っていますから、お父さんがお母さんを守ってあげてくださいね。」
この言葉にやられました。そうだ、不安にかられてる場合じゃない!自分が妻を守らなくてどうする!
「はい!ありがとうございます!」
危うく敬礼するくらいの勢いで背筋をピシッと伸ばして返事をしました。
「では、こちらが母子手帳です。」
机に母子手帳が置かれ、まるで赤ん坊を抱き上げるかのごとく両手ではっしと抱き寄せました。
「ありがとうございます!お邪魔しました!」
と立ち去ろうとしたらば、
「まだですまだです!説明がまだです。だからまだですってば!」
と必死に呼び止められました。母子手帳について一通り優しく丁寧に説明してくださってたはずだけど、僕は幸せ気分上の空で聴いていました。
「お子さんできて、どんな気持ちですか?他に何か不安なことはありますか?」
不安なこと・・?・・うーん・・。
「希望しかないです。はい。」
そして、頂いた母子手帳を慎重に慎重に、まだ首が据わっていないから優しく丁寧に腕に包み込ながら帰ろうとすると、
「まるで赤ちゃんを抱っこしてるみたいですね。」
この瞬間、父親になるという自覚が芽生えました。
母子手帳を抱きかかえ、僕は父親になりました。
と、思っていたけれど、このあと、父親っていったい・・と思うことばかり・・。
これは、僕と嫁さまと、そしてお腹の子との何物にも代えがたい十月十日のものがたり・・。
第一話はこちら↓
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
この連載記事は全16話を予定しています。
週2、Substackでは無料で配信します。




お父さんに母子手帳をもらってきてもらうのはいいかもしれませんね^^
自分の時には考えもしませんでしたが・・・・・
母子手帳の思い出、すてきです!
喜びと信頼が伝わります。
赤ちゃんが産まれて、母子手帳をもらって、
愛情たっぷりに育てられた雰囲気を感じます。
子供さんの笑顔が浮かぶようです。
次回も楽しみにしています🎶