結婚なんかしたくない!あれ?なんかいつのまにかプロポーズすることになっていた。
母子手帳を手に入れて僕は父親になる(第3話)
妻とは演劇で知り合いました。同じ舞台に共演したことがきっかけでお付き合いをし、一年後には結婚。自分の人生に、結婚があるなんて、はっきり言って考えられないことです。
結婚なんて・・。まだ演劇で食べていけているわけじゃないのに・・。まだ自分の生活でさえも精一杯なのに・・。
誰かが言った。
「結婚なんて勢いですよ。エイヤーですよ!」
勢いだと言われてもピンと来ません。が、どうやら結婚はやはり勢いらしいです。御多分に漏れず、僕にも怒濤のごとく押し寄せてきました。
2016年の11月19日、妻とまだお付き合いしている時。結婚なんてまだ考えてもいない時期。
妻から、弟が東京で結婚式を挙げるから出席してほしいと言われました。
さてどうしたものか?披露宴の席次はどうなるのだろう?当然、新郎親族卓にいる妻の隣以外にはない。では、肩書はどうしたものか?
新郎親族卓の席次、全員同じ姓。名前の上に、新郎の父、新郎の母、新郎の弟、新郎の義妹、と記された卓。妻の名前の上にはもちろん新郎の姉。その隣にいる一人だけ性の違う男の石橋。その名前の上には、
『新郎の姉の友人』
なんで?ってなりますよね?親族卓にただひとり、なんで姉の友人がいるの?と・・。絶対おかしい。
一番しっくりくるのは「新郎の姉の婚約者」
そうでなければ親族卓にはふさわしくない。しかし、婚約者と記すからには妻の両親に挨拶をしておかねばなりません。
今の状況だと、ご両親にお会いするのは長男さんの結婚式の親族卓で初めまして・・。いや絶対におかしい!結婚式の前に、まず両親に挨拶にいこうと決心しました。当たり前です。当たり前にもほどがある決心です。
11月3日、妻の家へ赴き、ご両親にご挨拶しました。拍子抜けするほど和やかに迎え入れてもらい、これで結婚式に出席できる。が、問題がもうひとつあります。
よそ様の結婚式に婚約者として出席するのに、それを自分の両親が知らない・・これまたおかしい。
親にご報告申し上げねば。まさに最大の難関。実家暮らしのため両親とは一緒に住んではいるものの、そんな話なんか一度もしたことがない。照れ臭いのなんの恥ずかしいのなんの。
話さねば話さねばと、ずるずるずるずる日にちが過ぎ、結婚式の3日前になりもう待ったなし。言うしかありません。
11月16日、いつもより早起きをし、意を決して母が仕事に行く前に話しました。どう話すか、どの順序で話すか、どんなトーンで話すか、すべて台本に起こして何回も稽古しました。まず最初の台詞は、
「結婚を考えてる人がいる。」
このあとの筋書きはこうだ。きっとこんなことを言われる。
「芝居やってて一人でも精一杯の生活なのに、やっていけるの?」
こう言われたら返す言葉がありません。だからずるずると報告できずに今に至っているのです。ところが台本通りにはいきません。母はこう言ってくれました。
「そうじゃないかなあと思ってた。よかったね。おめでとう。」
というところで目が覚めました・・・。ドラマでよくあるやつ、夢・・まじか・・。そりゃそうだ、現実はそんなに甘くない。そんなに都合よくいくはずがありません。
しかし両親から未承認のまま婚約者の肩書は使えません。なんとしても、今朝、言わなければ!ああ、夢の中で味わった緊張をまた味わわないといけないのか。
6時。母が起きた。台所へ向かう足音。6時30分、僕も母のいる台所へ。そう、30分怖気づいていました。
さぁ台所、母がいる。夢の中ではきちんと言えた台本通りの台詞。よし、言うぞ!
「お母さん、話したいことがある。結婚を考えてる人がいる。」
言った!最初の台詞!さぁくるぞ母の台詞。「生活はできるの?」のカウンターがくるぞ!
ところが・・。
「そうじゃないかなぁと思ってた。よかったね。おめでとう。」
正夢ってほんとにあるらしい。夢の中とまったく同じ展開。母親の勘というのはすごいもので、
「この前一緒にお芝居出てた子でしょ?」
母はすでに分かっていたようです。いい人がいることに。
結婚式に出席することも伝えると、「いってらっしゃい。」と言ってくれました。あまりに祝福してくれるのでこちらが心配になり、
「芝居やってて生活やっていけるか心配にならない?」
と聞いてしまいました。でも母は、
「なんとかなるよ。」
子ども3人育てあげた母親の言葉ほど勇気づけられるものはありません。
11月19日。妻の弟さんの結婚式。その翌週の27日。今度は妻を僕の両親に会わせるため家に連れていきました。
妻とお座敷の部屋に座り。父と母が対面に座る。座るなり母は、妻に手を合わせ、
「ありがとう。よかった!ほんとによかった!嬉しいね、お父さん!」
「うん、嬉しい。」
お座敷には仏壇があります。仏様そっちのけで妻に手を合わせ涙する母。そんな母を横目にそっと涙目の父。父の涙なんて、姉の結婚式の時以来。それを見て涙ぐむ妻と僕。
僕はこんなにも、父と母に愛されていたのかと、この人たちの子どもに生まれて本当によかったと思えた日。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
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この連載記事は全16話を予定しています。
週2、Substackでは無料で配信します。




バッチョさん、おはようございます😊
お母さん、先に気づいてたんですね…
「そうじゃないかなぁと思ってた」に全部入ってて、涙腺にきました🥹
私も親になってから、こういう場面は完全に親側の目で読んじゃいます。
仏壇の前のお母さんの「よかった!」、忘れられなさそうです。
連載、ずっと追いかけてます✨️
それにしても記事のペースが早くて凄い……🤲