なぜか娘がタロットカードに興味を持ちまして、買った本の付録にタロットカードが付いていたらしいんですね。
子ども向けの占い全集みたいな本で、いろんな占いが載っているんですが、その付録としてタロットカードが入っていたんです。
それで、
「お父さん、占ってあげる!」
「お母さんも占ってあげる!」
と言うわけですよ。
でも僕、タロットカードの知識なんて全然ないんです。
『ジョジョの奇妙な冒険』第3部のスタンド名でしか知らない。
あれって、占いたいことを思い浮かべながらカードをめくって、そのカードの暗示をもとに占うものなんですよね。
たぶん、そういう解釈で機能していたんですが。
娘はカードをシャッフルして上から引くんじゃなくて、神経衰弱みたいに1枚ずつ床にきれいに並べるんですよ。
それで、お母さんを占ったりしていたんですね。
僕は別のことをしていたんですが、娘がトコトコやってきて、
「お父さんも占ってあげる!」
と言うんです。
「何か悩み事ある?」
「占いたいこと言って。」
って。
でもね、そこで大それた願い事を言ったとして、それが嫌な結果だったら微妙じゃないですか。
娘がせっかく占ってくれたのに、
「悪い結果が出ました。」
なんてなったら、
娘の占いが悪かったのか、自分の運勢が悪かったのか。
何とも言えない空気になるじゃないですか。
だから、とりあえずどうでもいいお願いにしようと思って、
「じゃあ、お父さんの右の鼻と左の鼻、どっちの鼻毛が先に伸びるか占って。」
と言ったんです。
すると娘が、
「なんだそれ!」
と言うんですよ。
いや、それぐらいしか言えないんですよ。
「仕事で成功できますか。」
「契約が取れますか。」
「舞台のオーディションに受かりますか。」
なんて聞いて、悪い結果だったら嫌でしょう。
だから、鼻毛ぐらいしか占えないんです。
まあ、僕にとっては右と左の鼻毛の伸び方って、わりと切実な問題ではあるんですけどね。
……いや、やっぱりどうでもいいか。
それで占ってもらったんです。
神経衰弱みたいに床に並べられたカードを、娘が1枚引いた。
すると、
**皇帝(エンペラー)**が出たんです。
「うわっ!」
「めっちゃ良さそうなカードやん!」
エンペラーですよ。
国で一番偉い人じゃないですか。
その瞬間、後悔しました。
もっといい願い事にしとけばよかった、と。
娘だって、もし本当の悩み事を占ってエンペラーを引けたら、
「お父さんの願い事をいい方向に導けた!」
って誇らしかったでしょうに。
なんで俺は鼻毛にしたんだ。
ちなみに、その付録の説明では、エンペラーは
「YES」
良い方向に進みますよ、という意味らしいんです。
ということは、
私は左の鼻毛が伸びてほしいと思っていたので、
YES。
……どうでもええわ。
どっちが伸びてもええわ。
なんで皇帝を呼び出してまで、
「YES。」
って言わせてるんだ。
自分の鼻毛のために皇帝を召喚した男。
もっといいお願いをしとけばよかったなぁ、と思いました。
そのあと娘が、
「じゃあ今度は私がお願い事する。」
と言うんです。
娘は純粋ですからね。
「ずっとお父さんとお母さんと一緒に暮らせますように。」
というお願いをしたんです。
そして、また神経衰弱みたいに並べたカードを引いた。
よりによって引いたのが、
ハングドマン。
吊るされた男。
見るからに不穏じゃないですか。
説明を見ても、あまり良くない意味なんですよね。
すると娘が、
「うわぁーん!」
って泣き出したんです。
「お父さんとお母さんと離れ離れになるの嫌だー!」
って。
だから言ったやないか。
なんで遊びの占いで、そんな真剣なお願い事するねん。
しかも、あなた。
占うたびにカードをシャッフルしてないでしょう。
神経衰弱みたいに並べたカードを、めくっては元の場所に戻してるだけじゃない。
実はね。
お父さん、お母さんを占ってる時に、ハングドマンがどこにあるか見ちゃってたんだよ。
しかも、あなた神経衰弱得意じゃない。
場所も覚えてるじゃない。
なんで、分かってる場所のハングドマンを引くねん。
どうせ混ぜないんだったら、
「ずっと一緒にいたい。」
と思うなら、
さっきお父さんが引いたエンペラーを引いてくれよ。
場所分かってるんだからそこ引いてくれよ!











