警察に刀を向けたことがあります。
しかも職務質問中です。
普通に考えたら逮捕案件ですよね。
でも見逃してもらいました。
なぜかというと、
役者だったからです。
昔、チャンバラ芝居をやっていたんですよ。
その日は地方公演の帰りでした。
本番も終わって、
深夜です。
日付も変わっていました。
田舎道をひたすら走っていたんですが、
眠くて眠くて仕方がない。
なので道路脇のスペースに車を停めて、
少し仮眠を取ることにしました。
どれくらい寝たんでしょうね。
1時間くらいだったと思います。
すると突然、
コンコンコンコン。
窓を叩く音がするんです。
最初は夢かと思いました。
でも鳴り止まない。
コンコンコンコン。
コンコンコンコン。
誰が開けるか。
そう思って無視していたんですが、
次の瞬間、
ピカーッ!
懐中電灯が顔面を直撃しました。
まぶしさで目を開けると、
警察官が二人。
お化けじゃなくて警察でした。
それはそれで嫌です。
仕方なく窓を開けると、
「何してるんですか?」
と聞かれました。
いや、
寝ていました。
すると、
「ちょっと見せてもらいますね」
となりまして、
車内チェックです。
深夜。
田舎道。
車中泊。
完全に不審者です。
そして警察官の手が、
あるものを見つけました。
刀です。
正確にはチャンバラ用の刀ですね。
でも見た目は刀です。
警察官の口調が急に変わりました。
「これ何ですか?」
「なんで持ってるんですか?」
「何に使うんですか?」
完全に犯罪者扱いです。
いやいや違うんです。
今日使い終わったやつなんです。
役者なんです。
チャンバラ芝居の帰りなんです。
必死で説明しました。
当然、
信じてもらえません。
なのでスマホの動画を見せました。
今日の本番映像です。
すると警察官の態度が変わりました。
「あ、本当にやってるんだ」
「へぇ、面白いね」
「ちょっと見せてよ」
ここから話がおかしくなります。
真夜中です。
田舎道です。
警察官二人です。
そしてぼくは刀を抜きました。
警察官の懐中電灯がスポットライト代わりです。
で、
本番でやったチャンバラを実演したんですよ。
「やぁっ!」
とか言いながら。
すると警察官も真剣に見ている。
もう何の時間なんでしょうね。
職務質問だったはずなんですが。
そして実演が終わると、
警察官が一言。
「なるほど」
納得してくれました。
無事に疑いは晴れました。
めでたしめでたしです。
ただ、
この話には続きがあります。
ぼくが警察官に刀を向けて構えていた、
まさにその瞬間。
それまで全然車が通らなかったのに、
一台だけ車が通ったんですよ。
運転手から見たら、
警察官に刀を向けている男です。
完全に事件現場です。
案の定、
車が一瞬減速しました。
そりゃそうですよね。
でも警察官が
「大丈夫だから行っていいよ」
みたいな合図を出したので、
そのまま走り去っていきました。
たぶんあの人、
今でも何を見たのか分かっていないと思います。
ということで、
人生で一度だけ、
警察に刀を向けても許されたことがあります。
ただし役者限定です(笑)













