先日、実家に帰ったときのことです。
天井裏の物置を開けてみると、ダンボールの中にフランス人形が入っていたんですよね。小さい頃からずっとあったやつで、娘が喜ぶかなと思って取り出してきたんです。
そしたら父親が、ちょっと顔をこわばらせながら言ったんですよ。
「まだあったんか……」
何回捨てても、戻ってくる
どういうことなんだろうと話を聞いてみると、父親がこのフランス人形を何回捨てても、次の日には元の位置に戻っているというんです。もう30年以上前の話なんですが。
誰かからもらったその人形を、しばらくピアノの上に置いていたけれど邪魔だし別にいらないということで、ゴミ箱に捨てた。ところが次の日にはピアノの上に座っている。おかしいなと思ってまた捨てると、また次の日には元の位置に戻っている。
気味が悪くてしばらくそのままにしていたんですが、そのうちまた捨てると、またピアノの上に戻っている。
もう何回やっても同じで、いつの間にかそのままになっていたんでしょうね。引っ越しの際にダンボールに詰め込まれて、そのまま天井裏に眠り続けていた。父親はずっと「あの人形は気味が悪い」という記憶を持ち続けていたわけです。
人形、特に人のかたちをしたものには魂が宿るとか、思い入れがあるものには何かが入り込むとか、そういう話はよく聞きますよね。フランス人形はなおさら人のかたちをしているから、何者かの魂が宿ってしまったのかもしれない——そんな雰囲気になっていたんですが。
実はこれ、全部僕がやっていたんです。
父親がゴミ箱に捨てるたびに、祟りが怖くてゴミ箱から出して、またピアノの上に戻していたのは僕だったんですよ。次の日にまた父親が捨てると、また怖くて拾ってきてピアノに置く。それを繰り返していたわけです。
呪いでも何でもなく、ただ単に怖がりな息子が毎回こっそり戻していただけ。
30年以上経った今、自分の恐れのせいで父親をずっと震え上がらせていたんだなと思うと、なんか申し訳ないような、でもちょっと笑えるような、不思議な気持ちになりました。
ただ、一つだけ気になることがあって。
よく考えてみると、うちにピアノなんてなかったんですよね。
あれは一体何だったんだろう、ということで、今日はこのあたりで。













